第１ヒエラルキア（上級三隊の天使） 座天使（トローネ）、智天使（ケルビム）、熾天使（セラフィム）
・座天使、智天使、熾天使は「直接神を眺めることができる」存在であり、神意を実行する崇高な存在だといいます。
・「セラフィーム、ケルビム、トローネが他のヒエラルキアたちと違うのは、それらが、根源の宇宙叡智に直接
取りまかれている点にあります」
（霊的進化論・第10講）
地表の形成
・座天使（トローネ・上級三隊）が地球からあらゆる方向に向かって力を流出し、力天使
（デュナメイス・中級三隊）が宇宙空間から地球に力を注ぎ込んでいます。この二つの力は地表で出会い、
この力の均衡によって地表がさまざまに構成されます。そして能天使（形態の霊）たちが、
流動する大地を静め地表に形態を与えています。
「地上に外的に液体要素として現れているものは、意志の霊（座天使）たちトローネの外的な現れとして
理解しなければなりません。ここで言う液体要素は、今日の水ではなく、形態の霊（能天使）たちが静めた
太古の液体要素のことです。しかしこの作用には、いつもべつの要素が混ざります。意志の霊たちトローネは、
ケルビム（智天使）とセラフィム（熾天使）に助けられているのです。ケルビムは空気の要素のなか、空気状
のものとして地球の見かけ上の物質に浸透しているもののなかにあって、トローネを助けます。空気も
イリュージョンです。空気の背後には、ケルビム（智天使）という力強い存在がいるのです。セラフィム（熾天使）
は、わたしたちが熱として知っているもののなか、熱として存在しているものすべての背後で活動しています。
こうして、わたしたちは地球の中心から放射しているものの働きを見ました。ですから、『わたしたちの惑星の
中心から、意志の霊たちトローネ、ケルビム、セラフィムが働いている』と、いうことができます。」
（民族魂の使命）
上級三隊の天使たちの性格
・上級三隊の天使たちにおいては、自分の本質を複写することによって創造したものを、自分から分離します。
中級三隊の天使たちにおいては、彼らが創造し、客体化したものは、彼らがその創造物と結びついているあいだ
だけ存続しますが、上級三隊の天使たちが創造したものは、そこから彼らが離れ去っても、独立した現実として
存在し続けます。上級三隊の天使たちは、客体的で独立した存在を出現させることによって、みずからを知覚
します。他の存在を創造し、他の存在の中に生きることが彼らの内面生活であり、 世界を創造することが
彼らの外面生活です。
（天使たち妖精たち ＊筆者による要約）
太陽系の創造と第１ヒエラルキア
・現在の太陽系の始まりにおいて、至高の神的叡智である三位一体は宇宙体系のプランをセラフィムに渡し、
そのプランをケルビムが強化し、トローネが実現していったと、シュタイナーは述べています。
「セラフィームとは、古代ヘブライ秘教の意味で理解すれば、或る太陽系の至高の理念、至高の目標を
宇宙叡智から受け取るという課題を担った存在のことです。ケルビームは、この至高の目標を実現可能な
計画に置きかえるのです。そしてトローネは、もちろん比喩的な言い方になりますが、セラフィーム
が直感し、ケルビームが考え抜いたその崇高な宇宙思想を実践するという課題を担っています。」
「古い太陽系が消えたとき、この古い太陽系の内部で、第一ヒエラルキア、すなわちセラフィーム、
ケルビーム、トローネという三重の神性は、宇宙叡智に従って、セラフィーム、ケルビーム、トローネは
宇宙叡智にしたがって、宇宙空間の中に一つの空間を選び出し、そしてわれわれは
ここから始めよう、と言い合った。セラフィームは新しい太陽系の目標を直感し、ケルビームはその目標を
実現するために構想を練り、そしてトローネは自分の本性の中から火をこの球空間の中に注ぎ込んだ」
― これがわたしたちの宇宙の発端なのです。」
（シュタイナー「霊的宇宙論」春秋社、高橋巌訳より）
第１ヒエラルキアの天使と人間のカルマ
・第１ヒエラルキアの天使たちは、人間の前世の行為に従って来世での外的な運命を形作ります。
ひとは生きているときに善いことも悪いこともしますが、第１ヒエラルキアの天使たちは、
そのよいものすべて、悪いものすべての対になるようなもの、人間の行った行為に対して均衡をとる
ようなものを、人が死後、霊界に滞在しているあいだに形成します。そのとき形成されたものが
その人の来世における運命的な人物との出会い、重要な意味を持つ職業に就くというような、
外的な運命の原型になります。
・第１ヒエラルキアたちは、28才頃から49才頃までの人生の期間に働きかけ、「カルマの荷下ろし」
「カルマの実現」が果たされます。
天体との関連
・シュタイナーは惑星の運行について、座天使（トローネ）が惑星に空間を運行する衝動を与え、
智天使（ケルビム）が惑星系全体の動きを調整し、他の恒星系との関係は熾天使（セラフィム）
によって導かれている、と言っています。
・黄道十二宮は第一ヒエラルキア（座天使、智天使、熾天使）の物質的表現です。
その他
・人間の意志の背後では、第１ヒエラルキアの天使たちが活動しており、そこでは人間は、第１ヒエラルキアの
天使たちの人生を共に生きています。
「人間の意志の背後にあるすべてのものに関しては、人間は第１ヒエラルキアの天使たちで満たされています。」
（宇宙のカルマ）
・地上にある自然の力の中、土、水、空気、火のなかに第三ヒエラルキアの存在たちが流出しています。
・セラフィム・ケルビム・トローネは東洋では「五仏」（ディヤーナ存在）と呼ばれるそうです。
＊ ＊ ＊
第１ヒエラルキアの天使たちから派生した存在たち
・上級三隊の天使たちから分離して自然界に下った存在として、周期の霊たちがいます。
周期の霊は地球のアストラル体として認識される存在で、地球の規則的な運行、
昼と夜、四季など、時間的な出来事の繰り返し、周期的に繰り返されるものは、これらの周期の霊に
よって引き起こされます。
座天使 トローネ（Throne）
・シュタイナーは意志の霊とも呼んでいます。
・人間が最低次の構成要素として肉体を持つように、座天使の最低次の実質は、意志からできています。
・「土星期」において人間の物質体のもとになるものを流出しました。
・地上に外的に液体要素として現れているものは、意志の霊（座天使）たちトローネの外的な現れとして
理解しなければなりません。ここで言う液体要素は、今日の水ではなく、形態の霊（能天使）たちが静
めた太古の液体要素のことです
・座天使（トローネ）が地球からあらゆる方向に向かって力を流出し、力天使（デュナメイス）が
宇宙空間から地球に力を注ぎ込んでいます。この二つの力は地表で出会い、この力の均衡によって
地表がさまざまに構成されます。そして能天使（形態の霊）たちが、流動する大地を静め地表に
形態を与えています。
・土星期に座天使がケルビムにささげた供犠から時間が生じました。時間は時の霊（権天使）として
誕生しました。
智天使 ケルビム（Cherubim）
・シュタイナーは「調和の神霊」とも呼んでいます。
・地上の空気の背後で活動しています。
・黄道獣帯（黄道十二宮）は太陽期におけるケルビムの「輪舞」に由来します。
・宇宙の中で惑星系全体の動きを調整する働きは智天使によって担われています。
・太陽のガス体に反映する黄道十二宮（ケルビムの姿）から動物の物質体の最初の萌芽が形成されました。
（霊的宇宙論）
「叡智を蓄えるために、人生の歩みの多くを費やし、長年にわたる豊かな経験によって多くの叡智を集めた、
まじめな、品位のある人物がいます。その人がもたらすものを、私たちの心情に作用させるとき、上級三隊の
天使たちのうちの、中位の位階の天使の特徴をかすかに示すものを、私たちは感じることができます。
『そのような人物が判断を述べるとき、個人的な意志が語られているのではない。何十年もこの人物の中に
蓄積されてきて、非個人的なものとなった生が語るのだ。』と、私たちは思います。」
「何十年間かにわたって蓄積された叡智ではなく、宇宙生成のなかで何千年、何百万年をかけて集められた
叡智が、ケルビムから崇高な力として流れ出します。」 （天使たち妖精たち 西川隆範訳）
熾天使 セラフィム（Seraphim）
・シュタイナーは「愛の神霊」とも呼んでいます。
・「三位一体」から宇宙体系の目的を直感し受け取るという課題を担った存在です。（霊的宇宙論）
・座天使、智天使と結びついて、黄道十二宮に物質的に表現されています。
・地上に熱として存在しているものの背後で活動しています。
・「上級三隊の最高位にある、セラフィムの性格を述べるのは、さらに困難です。しかし、つぎのような
比喩によって、セラフィムが霊的まなざしに与える印象について、イメージを得ることができるでしょう。
（中略）何十年にもわたって経験を蓄積して、圧倒的な叡智を有するようになった人を考察してみましょう。
そのような賢人から、非個人的な人生の叡智が語られます。その賢人自身が語る必要はありません。
何十年にも渡って蓄積されたものが、内的な炎のように、その人物の眼差しのなかに存在しています。
そのまなざしが何十年にもわたる苦悩と経験を語ります。
そのようなまなざしを、思い浮かべてみましょう。その人物は私たちに言葉で語るだけではありません。
言葉の響き、言葉のニュアンスのなかに、豊かな人生経験を写し取ったものが存在します。その人物が
何かを語るとき、底流のように響くものを私たちは聴きます。その人物の話し方から私たちは人生経験を
聴き取ることができます。
そうすると、神秘学者がセラフィムへと上昇したときに感じるような感情を持ちます。」
（天使たち妖精たち 西川隆範訳）
天使の９つの位階について書きました。また、かつて天使たちが「人間」であった、ということも書きました。 ここで「人間も天使の位階のなかに位置づけられる存在なのか？」という問いが出てきます。
シュタイナーは人間を天使たちの10番目のヒエラルキー（位階）に位置する存在であると考えました。
そして、人間は、輪廻転生のなかで自分自身を向上、進化させ、現在の地球において課題を果たすことに
よって、はるかな未来（木星進化期）において天使（アンゲロイ）の位階に立つことになると考えていました。
彼は人間を「自由の霊」とも呼んでます。
人間
自由と愛
・「人間をヒエラルキアの中に位置づけるとすれば、その人間をどう語るべきでしょうか。大天使と天使のあとに
位置づけられる「自由の霊」であり、「愛の霊」である、と語ることができます。」（霊的宇宙論 第10講）
・旧約聖書創世記に書かれているサタン（ルシファー）による「誘惑」によって、人間に悪と誤謬の可能性が与えられ、
感覚的情熱やエゴイズムを持つようになった。しかし、同時に自由の可能性をも得ることになった。（注1）
この出来事の背景には、悪という回り道を通って善を発達させようとする神の摂理がはたらいており、人間は
自由と愛によって悪を克服するという使命を持っている。そして、その「使命」を達成できるようにするために、
キリストという存在が現れたのである。…とシュタイナーは考えていました。
シュタイナーのキリスト論についは、ここではあまり詳しく触れませんが、シュタイナーの神秘学のなかで、
核心部分とも言える重要な位置を占めています。
・シュタイナーは、人間はキリストの力を、自分の自由意志で受け入れるならば、ルシファーが人間に与えた
自由や誤謬の可能性等を愛によって良いものに変え、将来自分とともにルシファーまでも救済する
ことができると書いています。
・「私たち人間はこの使命を達成するために、地上に降りてきました。その人間に対して、キリストが自由なる
助け人として、この世に現れたのです。上から働きかける神としてではなく、多くの人々の中の最初に現れた
人としてです。（注2）」 （霊的宇宙論）
・「…この天使たちは、その結果「ルチフェル存在」と呼ばれ、地球期に人間のアストラル体に働きかけ、人間に
悪の可能性を植え付けました。そしてそれは、人間が自分の力で自由に進化できるようにするためでした。
ヒエラルキア全体の中で、天使の一部分と人間だけに、自由の可能性が与えられたのです。いわば天使の
系列の中から自由が始まるのですが、人間の場合にはじめて、自由が、生きることの本質と結びつきました」
（霊的宇宙論）
・「大腿骨の一部を見ればそれはなんと見事な組織であることでしょう。（中略）どんな技術者にもできないくらいに、
最小の素材から最大の積載力を引き出しています。（中略）人間が地球進化期において叡智として獲得する
ものは、それより前からすでに地球に植え付けられていたことがわかるはずです。（中略）月進化紀の経過の
なかで、叡智が存在と被造物に流れ込み、その叡智が、地球が闇のなかから現れたときに存在していたのです。
今では、すべての事物に叡智が注ぎ込まれています。今日では、周囲を見ると、いたるところに叡智が芽吹いて
います。木星紀（木星進化期）になると、周囲の存在はこのうえなく幸福な愛の香のよう何かを流出するように
見えます。あらゆる事物から愛が流れてくるようになるのです。この愛を発展させるのが、地球進化紀の使命
なのです。今日叡智がすべての事物を司っているように、木星紀には、愛がすべての事物をとおして流れてきます。
人間が次第に愛を発展させることを学ぶことによって、この愛は地球進化の中に流れ込んできます。
しかし、人間は精神的な愛を、すぐさま持つことはできません。この愛はまず、低次の領域に植え付けられねばなり
ませんでした。血縁関係です。血縁関係で愛を訓練するのが、最初の学校です。血液の中を流れる共通の血が
みずからを愛したことによって、離れ離れの人間たちが集められたのです。それは愛の偉大な予備学校
（フォアシューレ）です。そして、物質的な愛にとどまらずに、愛を精神的なものにして、魂に愛を伝えていく衝動が、
キリスト衝動なのです。」
（黙示録の秘密）
・地球本来の使命とはなにでしょうか。「土星」の使命は意志の刻印にあり、「太陽」の使命はとくに感情の
要素の刻印にあり、「月」の使命は特に思考の要素、人間のアストラル体のなかに存在するものを刻印
することにありました。地球進化期の使命は、この三つの要素の完全な均衡をもたらすことにある、と言うことが
できます。人間は、まず、自分の内面に思考と感情と意志の均衡をもたらすという課題を持っています。
人間のなかにおける自我の行為は、人間のなかに活動的な中心点を創造することです。その中心点を通して、
この均衡状態が準備され、第四の要素が作られます。先行する三つの要素に加えて作られる第四の要素は
‘愛の要素’です。この均衡の成果は、この三つの力の共同のなかにおける愛の働きであることが
明らかになります。わたしたちの惑星は、愛の惑星です。愛は地球の使命と地球以後の受肉を通して、
進化全体に織り込まれていきます。地球において、愛はもっとも低次の形ではじまります。愛は純化され、
浄化され、地球進化の終わりには思考、感情、意志と完全に同等の権利を有する要素として現れるでしょう。
（民族魂の使命より…筆者による要約）
・「地球は、愛と自由の宇宙（コスモス）です」（霊的宇宙論）
・シュタイナーは人間の進化のあるべき姿について、自我を全体自我のなかに融合させ、解消することではなく
自立した、自由な自我の共同体、固体化された、自我の共同体を築くことである、と考えていました。
「自我が自我に対して自由に向かい合うのが、愛を通して表現される地球の使命なのです。
強制された愛、鎖でつながれた愛は完全な愛ではありません。愛さないこともできる
ほど自由で、独立したのもであるときにのみ、愛は完全に自由な贈物なのです。」 （黙示録の秘密）
・自我がアストラル体、エーテル体、肉体に働きかけることで人間は進化していきます。
・「天使の世界3」で、人間は、肉体、エーテル体、アストラル体、自我を持った存在であると書きました。
現在人間は、自我の意識的働きかけによってアストラル体を変化させ、人間の第５の構成要素である
「精神的自己」（マナス）に造りかえる作業をしています。
「感覚的な快楽に耽っている人が、低級な傾向から離れて高級な方向に向かうと理想主義者になる。
そうすることによって、人間は自我によって心魂を高貴にし、精神化するように働きかけたのである。」
（神秘学概論）
・性格や気質は、思考や感情よりも変わりにくいものですが、自我の働きかけでエーテル体を「生命的精神」
（ブッディー）に造りかえることによって変化させることができます。例えば、悪い記憶力を良い記憶力に、
短気を柔和に、憂鬱質を沈着さに変化させます。芸術と宗教的生活がもっとも強くエーテル体に作用します。
・同様に自我の働きかけによって物質的身体に働きかけることによって人間の第７番目の構成要素である
「精神的人間」（アートマン）に造りかえることになります。
現在多くの人は「精神的自己」を部分的に形成しています。「生命的精神」「精神的人間」はまだ萌芽の状態に
あります。
＊ ＊ ＊
（注1）この人間が置かれている立場、人間だけが経験することのできる立場は、非常に意味深いものに思われます。
（注2）「上から働きかける神としてではなく、多くの人々の中の最初に現れた人として」…この点が重要だと思います。